きこえないけどAlles gute zum neuen Jahrってたぶん言ってる

 どうも〜!実はうっかり年明けから2週間ほど日本へ一時帰国していました富田です。飛行機の窓から民家の窓を見かけた瞬間に号泣したり(そもそもベルリン発乗り換え空港行きの飛行機で号泣していましたが)、帰国即インフルエンザに感染して朦朧としたり楽しく過ごしました。月並みながら日本は冬もたくさん晴れの日があって、ご飯が美味しくて本当に好きだな…… 今回は前回の予告通り年越し回です!うかうかしていたらとんでもなく時間がすぎてしまったことを申し訳なく思います。

12月26日
 始まりはクリスマス2日目の昼でした。ドイツ出身の同居人から「そろそろ街中で突然花火が上がるようになる、法律上は28日以降しか打ち上げは認められていないのだけれど、今朝音が聞こえたからもう始まっているのだと思う。28日以降は本格化して市街戦のようになってくるから気をつけてね、本当に気をつけてね!」という連絡が来て、確かに昼頃遠くでパン、と破裂音のようなものが聴こえていたのであれは花火だったのか、と納得していました。認識が甘いので・海外・大きな破裂音の2要素が揃うと「発砲かな?」と思ってしまうふしがあります。(ちなみにドイツ国内での拳銃所持は免許制です。免許取得はかなり厳しい、という話もあります。)

12月27日
 どうして年末に花火を上げるのかというと、悪魔と悪い魂を追い出すため、だそうです(同居人談)。要は厄払いですね。ベルリンでの年越し経験1度目、大掃除っぽい風習は見られませんでしたが、街中の見えない厄を払うやる気はあるようです。「まあ、もうとっくに形骸化して若者のお楽しみになってしまっているのだけどね……」とも、同居人談。

12月28日
 28日からスーパーとホームセンターで花火が売られ始めます。(普段の花火の販売は禁止されています)一気に通りからきこえる破裂音が増えました。

12月29日
 スーパーで買い出しをした帰り、急に背後から火薬の匂いがして動揺、振り返ると室内から窓を開け、通りに手だけを出して花火をしていました。ねずみ花火と手持ちのものでした。なんとなく「しばらくダウンジャケットを着ないでおこう」と思いました。溶けるから。

12月30日
 以降外出の際は基本的にウール混のマントを着ていました。

12月31日~1月1日
 ついに来ました年越しの日。まずは友人たちと買ったロケット花火をしました。その時の様子がこちら。


 手持ちだったんでしょうか。手持ちするのも危ないと判断したので、この後は適当な無人の駐車場で手頃な瓶を使って楽しみました。土に刺しちゃダメ。
 また、球状の戦闘力弱そうな花火も買ったんですが、なめてかかったら友人が火の粉を浴びていて心配しました。しかも最後は自爆していました。証拠も塵も残らずクリーン!でしたが、なんとなく儚い気持ちになりました。この時にああドイツの花火は色の複雑さから生まれる美しさよりも多くは光度と破裂音の大きさといきなりに振っていて、ちょっと見栄えする爆発物なんだなという認識に落ち着きます。

 23時ごろ、いよいよ年越しが迫ってきたので通りへ出ました。映像だとこんな感じ。


 投石のような質量ある花火は地面に対し垂直ではなく平行にあげられ、マンションとマンションが通りを挟んで花火を相手の建物に打ち込みあい、ひっきりなしにパトカーと救急車が通りを走り抜け、信号で止まろうものなら一斉に花火が打ち込まれ、花火の煙で街中はうっすら白みがかり、バスが懸命に仕事していて、(おそらく大幅に遅れていたと思います、それでもきちんと大晦日に仕事していてえらい、こんなに危ないのに……)

 この時私は一眼カメラでの撮影をしていたのですが、実銃じゃんと思いカメラを向けたところ「警察にバレるとまずいから一眼では撮るな」と怒られました。謎のフレンドリーによりスマホならいいよ!と許可をいただき撮影、ついでに1発撃たせてもらいました。ちゃんと実弾は込めずに音を出しているだけのようです。盛り上げたいという真心。厄をとにかく徹底的に払いたいというきれい好きの精神。重ね重ね申し上げますがドイツ国内での拳銃所持は免許制です。

 私と友人は年が明けて2時間弱花火たちを楽しんで(友人はやや怯えていましたが)自宅に戻りました。年明けの瞬間ですが、ひっきりなしに花火が上がっていたので特にカウントなどはありませんでした。時計を確認して「あ、あけてる……どうも、!」と偶然居合わせた隣の人とささやかに祝いの言葉を交わすような。でも爆発音にかき消されて、ほとんど聞こえなくって、笑いあって肩組んでハイタッチして解散、というような。

 そういうような感じで、爆発と火花と煙の中で2019年を迎えたのでした。ちなみにコートがちょっと焦げ、人が数人死んだとか例年指がもげる人がいるだとか負傷者は多いとか正月用花火だけで今や2~3億ユーロの売り上げがあるとかそういう話を聞き、その後数日間(おそらく三が日くらいは)ポツポツとどこかから爆発音を聴き、私のお正月は終わりました。

 通りにゴミが山ほど落ちていてちょっと引きましたが、数日経ち気がついたらそれらもなくなっていました。

 お約束どおり今回は年越しレポートをしまして、そして実は今回で連載が終了となります!色々あったりなかったり書けたり書けなかったりしましたが、とにかくベルリンはすてきなところですよ、街の人々は他人に興味がないからこそ寛容で、晴れの日はうつくしく陽がさして、公園がたくさんあって、大きな湖があって、日本から遠く離れてさみしいですが、時差がたくさんあって遠く思いますが、でも逃げ隠れにゆくにはうってつけの土地です。ということが伝わっていればうれしいです。伝わってなかった場合はとりあえずいらしてください。案内しますゆえ!それではまた、どこかでお目にかかれることを祈りつつ!良いお年を〜!

 

<プロフィール>

富田香織 Kaori Tomita

1998年生まれ。アーティスト。
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