教えて、大桃耕太郎!

大桃耕太郎からLINEで「展示見に来てよ」とお誘いが。久しぶりのお誘いに乗って神保町の「美学校」まで遊びにやって来た。・・・ってちょっと待て。大桃耕太郎って美術やってなかったよな? 真相が知りたくて、あと「平成気分」って展示タイトルに惹かれて展示を見た。感動した。美術初心者にしちゃ、めっちゃ良いじゃん。これは早速、その場でインタビューを依頼した。

 

──展示おめでとう。ところでさ、今からインタビューしてもいい?

できるかなぁ。何喋るの?

 

──ご承諾ありがとう。まず、美術をやっていたのがびっくりなんだけど、昨年10月に美学校に入ろうと思ったきっかけはなんだったの?

それは、その頃アートやりたいなと思ってて、自分アートの教育を受けたことなかったから、そういうところに一回は入って学ぶ機会があったらいいなと思って。たまたまtwitterで募集を見かけて入りました。中島晴矢さんも以前在籍していたし、いいかなと思って。あと、チンポムが好きだったってのもある。彼らも美学校系だったから。

 

──いろんな教室がありますけど、どのように決めたの?

候補はいくつかあって、平日はつくばで大学の授業があったし、土曜日開講の松蔭先生のアートのレシピにしたかな。渋家で一緒だった中島晴矢さんが受講生だったというのもあるかも。

 

グラセフの血の跡を再現した作品「GTA5 – グラフィティ」

 

──日々、どんな授業だったの?

うーんと、先生の話を聞く。あと課題がいくつかある。

 

──印象に残ってる授業はある?

あれやな、作家論。1人アーティストを決めて、その人をサーヴェイして調べて、その人になりきったつもりでその人の作家論を自分の事のように喋る。

 

──へー、それいいね。コピーする練習になる。なにより作品を読み取る練習になるね。

そこで大竹伸朗をやったんだけど、なんかすごいグダグダになって、まとまらないまま話したら1時間ぐらい喋っちゃって。

 

──大竹伸朗って、私知らないから説明が欲しいんだけど、どんな人なの?

ちょっとうまく説明できないんだけど(笑) えっと、画家。説明は、記事にするとき適当に挿入しておいて!

1955年生まれの美術家。直島での家プロジェクトが有名で、古民家を改装し、現代の芸術家が家の空間そのものをインスタレーションにする。代表的な展示として2013年・ニューニュー(猪熊弦一郎現代美術館)、書籍としては「直島銭湯アイ・ラブ・湯」が挙げられる。

 

──授業とかワークを通じて、自分の作家性に影響が与えられたものってある?

田上杜夫(たがみもりお)。そこにいるんだけど、話してて自分達がどういうときに興奮するのかって共通点があって。リスキーなこととか反社会的なこととかそういうのをやっちゃうと、ドキドキしちゃう。たまらない感じをすごい共有できて。それはかなり自分の作家性にハマったというか、確認できた。杜夫と子供の時にしたイタズラとかの話で盛り上がったのがきっかけだったかな。その時にお互いのアナーキーな性分にシンパシーを感じたんだと思う。たまに一緒にディグったりとか、ネタ出し会とかビデオ通話でやったりしてる。「これヤバいな」みたいな感じで。そういえば「GTA5-グラフィティ」は杜夫と話してるときに出てきたネタだよ。

「ディープドラゴン」ディープラーニングより自動生成された遊戯王カード。

 

──そこにシンパシーがあったんだ。

そう、あったね。

 

──今回の展示「平成気分」はタイトルとかコンセプトはどうやって決まったの?

なんだろう。他のメンバーが決めてくれた感じかな。俺は最初タイトルとかいらないんじゃね? とか言ってた。タイトルとか決めても自分の作品とは関係ないし、決まってるし。だからかなり任せてた。

ロケット花火を差し込んだチェス。相手の駒を取るときは着火して上空で爆発させる。

 

──そうなんだ。

なんだかんだ、くらげくん(結城海月)とかステートメントがんばってくれた。俺の作品とかも肯定できる感じで書いたと言ってくれた。ポストインターネットとか言い始めて。

 

──じゃあ話し合いが持たれたわけではないんだ。

あ、でも、タイトルのネタ出しは2時間くらい話し合った。そんなかでチラっと出た感じだよね。

 

──同じ時代を生きて、同じ空気感、同じ絶望感を共有しているから、誰がタイトル出しても納得いくよね。それとは打って変わって大桃耕太郎の作品って、人生楽しんでる。銃とか酒とか酩酊していくようなモチーフを出しつつも、悲壮感がないんだよね。通常、現代美術家がグラセフとかを扱ったらもっとシリアスになっちゃうんだけど、そういうのが一切ない。あ、これが「平成気分」ってことなのか。

「遊び」とか「面白い遊び方」を考える、思い付いて、とか。

 

──どの作品から思いついたの?

「ロケットチェス」「あやかりペディア」「ディープドラゴン」「セルフポートレイト-レナ」「車ルーレット」、「のみオセロ」「GTA5-グラフィティ」っていう順番かな。

車が停車したときにルーレットが次の目的地を指し示す作品。「車ルーレット」

 

──全部聞くと大変だから、お気に入りの作品を一つ解説していただけないですか?

やっぱり「車ルーレット」かな。これをやってるときが一番楽しかったかも。

 

──車の側面に緯度と経度が書いてあって、タイヤについた矢印がそれを指し示す作品だね。

普段行かないような場所、誰も目的地にしたことがない場所を目的地にして、ドライブした。友達とやったんだけどすごい楽しかった。

 

──これを思いついたきっかけは?

歩いてて、車のタイヤが回転しているのを見て閃いた瞬間があった。作品を作ってるって感じる瞬間はこうやって遊んでるときが一番感じてて、この映像を編集しているときは作品を作っている感じがしないんだよなぁ。うん。

 

──漫画「ハンターハンター」は読んだことある?

読んだことない。

 

──あの漫画も全体を通じてゲーム感じて遊びがあって、楽しんだものが勝つっていう世界観なんだけど、大桃耕太郎の作品って一望してみると、全部ゲームに関係があるから、その中で「セルフポートレート-レナ」と「あやかりペディア」だけゲームの世界から外れてるように感じるんだけど。

ゲームといえばそうだけど、遊びっていう括りをすればイタズラとかも含まれて、セルフポートレートもあやかりペディアも含まれてる。「あやかりペディア」はいたずらだよね。「セルフポートレート-レナ」は友達とかが論文を発表するときに、自分のポートレート写真を使ってもらって自分の写真を流通させちゃうみたいなイタズラだし、研究者が査読するときに違和感に気づいてクスってするだろうなって。いつものレナと違うなって。そういうのが楽しいかな。

「セルフポートレート-Lena」

 

──ありがとうございます。今後はどんな作品を展開していきますか?

今後は、こういう作品とかのアイデアを思いついたときってやってみたくなっちゃうっていう、原動力が湧くから、アイデアが尽きるまではたくさん作っていけたらいいと思ってて。思いつく限りは。9月から留学に行く。

 

──え、どこに?

オーストリアのリンツってところ。毎年9月にアルスエレクトロニカっていうメディアアートの祭りがあるところで、そこの芸術大学に1年間行くよ。9月からだからアルスで始まってアルスで終わる感じ、作品も出せたらいいな。あ、アルスで面白いと思った作品3つくらいあとで送るから載せておいて!

http://archive.aec.at/prix/showmode/52896/

http://archive.aec.at/prix/showmode/52888/

http://archive.aec.at/prix/showmode/12122/

http://archive.aec.at/prix/showmode/42461/

 

──じゃあ9月以降は1年間も会えないわけか。

そうだね。

 

──分かった。じゃあそのときに大きくなって帰ってくるのを楽しみにしてます。ありがとうございました。

「のみオセロ」駒をひっくり返すたびにお酒を飲み酩酊していく。

 

 

<プロフィール>

大桃耕太郎 Omomo Kotaro

1994年生まれ。2016年東京理科大学理工学部建築学科卒業。筑波大学図書館情報メデイア専攻修士2年、落合研究室所属。
光や超音波などの非接触力を応用した建築的要素をテーマに研究をしている傍ら、現代アートに広く興味を持ち、作品制作をしている。

「Solar Projector」Ars Electronica Festival 2016展示、Creative Hack Award 2016 アイデア部門賞受賞。
「ROCKET CHESS」 LOFT & Fab Award 2017展示、LOFT 30周年記念賞受賞
「BOMBGUN」筑波大ギャラリーT+ 2017.11展示
「Soft Kill Pavillion-X」TOKYO DESIGNERS WEEK 2013展示、第1回Asia Award 学校作品展セミグランプリ。等

 

TOP写真・文 : 稀代明日香