ピストンズ、その6年。

コロコロコミックではなくコミックボンボン

スーパーファミコンではなくセガサターン

あの頃みんなが好きなものが好きじゃなかった。

メインストリームにいたくない
かといってサブカルチャーという括りにも入りたくない
どこにもいたくない、わがまま、寂しがり

……付き合ってらんないしょ?

 

こんにちは。暗澹たるミレニアム世代。

クラスには何人かいたよね。

 

Pistons(ピストンズ)

そんなやつらが徒党を組んで劇団を作った。

結成から6年。

俳優の劇団員は全員辞め

今は演出の小林涼太と作家の広瀬正人の二人きりの劇団だ。

筆者も旗揚げの頃から今までなんらかの形でともに活動してきた。

その頃から劇団は様々に変化したが本質は変わっていないそのルーツを知りたくなった。

そんなこと誰が知りたい?俺が知りたいだけだ。気にするな。

この記事が公開される翌日には公演が控える彼らに話を聞いた。

小林涼太(演出家兼役者)                   広瀬正人(作家兼音響、選曲)

──こんにちは。まぁ(知っていることばかりだから)特に聞くことはないんだけども

小林「嘘だろ……..」

広瀬「笑」

いきなり二人は絶句してしまった。

深夜の時空と治安が多少歪んだ高円寺のデニーズでインタビューは行われた。

 

 

迷惑な話だよな

──ピストンズが不思議だなぁと思うのは小林さんが奈良、広瀬さんが千葉、大学は長野。

今の活動拠点は東京。場所を持たないよね。ジプシーみたいだなぁと思った。

一同「wwwww」

広瀬「まぁ信州大に行ったのは演劇関係なく偏差値の問題だよね」

小林「うんw」

広瀬「国立大学で行きやすいところが信州大だった」

小林「北大に行きたかったけど、全然ダメで
まぁ地元を出たかったというのもあって農学部に行きたかった。

小林「もともとはピストンズは信州大学の劇団山脈(やまなみ)というサークルがはじまり。」

広瀬「旗揚げは2012年5月。初演は9月。」

小林「信州大の院を1年で中退した。
松本市で劇団を立ち上げようと思い根回ししていた。

後輩の家に寝泊まりし、ある朝起きたら東京にいかねば!という天啓が降りてきた。」

広瀬「その時小林から作演をやってくれと言われた。

じゃあお前は何をやるんだと思った。作はやるけど演出はお前がやれと」

小林「俺は何をするつもりだったんだろう。ささっとやめるためかなww」

広瀬「迷惑な話だよな」

小林「迷惑な話だよね。俺の天啓によってw」

 

 

氷点下の中で演劇を覚えた

小林「大学には入るまで演劇をやってこなかった、広瀬は高校演劇をやってたけど」

広瀬「山脈時代の話をするとスタジオは一応プレハブなんだけど壁のある屋外。
先代が壁をぶち抜いてしまったため壁はダンボールだった。呼吸する壁とも言われていた」

小林「冬は地獄。氷点下の中で演劇を覚えた」

広瀬「やまなみには役者とスタッフを同時にやる習慣があった」

スタッフ作業は効率が悪く夜22時から深夜3時まで。
その間に衣装、照明、装置の立て込み、音楽の選曲などをした

広瀬「今思えば選曲なんて家でやればよかった作業だな、大学の弱いwifiを拾って凍えながらパソコンに向かっていた。」

小林「それしか知らなかった。あんなに凍えながらやる作業じゃない」

 

 

長野でも東京でも外様だった

小林「壊れたプレハブとか潰れたスーパーとか生協の部屋とかで演劇をやってけど

やっぱり演劇の教育を受けてきた人にコンプレックスがある。

みんなある程度の流れがあった中で俺らは何もなかった。

東京の出てきたはいいものの、所詮外様でコネもないから苦労した」

広瀬「まぁ長野でも東京でも外様だったよね。メインストリームにいたくない。

かといってサブカルチャーという括りにも入りたくないどこにもいたくない。」

小林「わがまま」

広瀬「寂しがり」

小林「……付き合ってらんないしょ?」

 

旗揚げ。そして

旗揚げは広瀬小林と役者二人。

広瀬「立ち上げの時演劇をやることに自分が懐疑的だったどうせどっちかは断られるんだろうから役者二人が入るなら自分も入ることを条件に受け入れた。」

小林「(役者は)二つ返事でOKだったよねw

広瀬さんは就活も無事失敗しあえなく劇団入り

広瀬「1作目が4人童貞の話がセックスをしようとする話。

(4 Ways to Make Sex for 2 Weeks)」

小林「喫茶店で会議した時の題材なんだけど会議で題材決めると大抵こうなるよね。」

広瀬「頭を抱えるほど悩んだけど青春映画のエッセンスを取り入れてなんとか形にした」


小林「作家がいて本当によかった。」

2作目、3作目と公演を打ち、女性の俳優が加入したり一時は劇団員は6人になった。

4作目のJOE MEEKではイギリスの音楽プロデューサーの一生に焦点を当て徐々に評価を獲得つつあった

本が書けなくなった

小林「5作目は商業演劇っぽくしたかった。

吉本興業の役者を使ったり、人も多く入れたり。話的には気に入っているけど
だけどそれに耐えうる自分たちのキャパがなかった。」

広瀬「5作目の公演が終わった時に離人症みたいなずっと夢の中にいるみたいなそんな感覚が続いた。

その頃からアイディアは出ないし、音楽が聴けなくなった。」

 

劇団員がいた時のピストンズと現在のピストンズ

 

 


──
反動が大きかった?

広瀬「疲弊した公演であった。限界も感じた。」

そして俳優が全員いなくなった

小林「(自分たちにとって)回数を重ねるごとに劇団員は器量不足に悩んだ。タイミング的には辞めてもらおうかと声をかけようとした時、

劇団員から辞めていった。やっぱりやめるとなると辛かったなぁ。」


広瀬「(辞めていった」劇団員たちは)友達であることは変わらない。逆に演劇のことで悩まなくて良かった」

小林「ただ、お互い共有したものがなくなった。かつてできたことはもうできなくなった。」

 

──役者が辞めて劇団を畳もうとは思わなかった?

小林「役者が辞めてからはゆるい共同体を目指そうと思った。なにか思いついたらできる場所にしていく。壁はないし誰でも入れる。泥棒でも。盗るものはないけどw

 

──周りには愛されているよね。ピストンズ

小林「というか心配されてるw」

広瀬「山脈時代の人はもう演劇もやめてて、そういう人たちが俺らに希望を託している。自分たちの山脈はまだ続いているって」

小林「俺は知らんけどなw」

──今後はどうしよう?

小林「誰がピストンズを名乗ってもいい。もちろんフィーリングだけど。

だからもうピストンズとして今後の夢はない。申し訳ないくらいない。」

広瀬「大きな公演をやりたいはやりたいけど今後はもう派手にはやらない今回の公演みたいな家族という括りの小さい作品をいくつかやる。それがシリーズ化できたらいいかな」

ピストンズ#8
  Family Affair
脚本:広瀬正人 演出:ピストンズ
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ーいつもより、すこし身近なピストンズ。
べつに息子は脇からうまれてないし、叔父も伝説のコメディアンじゃない。
奥様はもちろん魔女じゃない。
それでもうちには問題がある。みんなは笑うけど、とにかくやっかいで、頭をかかえてる。
きみにもあるだろう?そんな家族の事情が。そう、家族の事情だ。
It’s a Family Affair.
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●SIDE A “LIVING”
That’s Why I’m Living (Look At Me)
母の急病をきっかけに、姉と母が暮らす家に帰省した妹。
生活を維持しようとする姉と、生活を変えていこうとする妹。
彼女は不自由だったし、彼女は自由だった。
そして、彼女たちはお互いを救おうとするのだが……。
歪になってしまった姉妹の、“生きていく”ための物語。
出演
金渕琴音
真寿美
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●SIDE B “DYING”
Don’t Remember Me
奈良県のもう誰も住んでいない家を整理するために叔父を手伝いに来た甥っ子。
甥が祖母の日記をみつけたことから、その日記の処遇をめぐり二人は口論を交わすが……。
覚えられていつづける限り死なないらしい我々が、“死んでいく”ための唯一の方法。
出演
寿寿(オクスリ/オヒトリ)
小林涼太(ピストンズ)
◆日時:
6月16日(土) 11時/14時/16時30分
6月17日(日) 11時/14時/16時30分
6月23日(土) 11時/14時/16時30分
6月24日(日) 11時/14時/16時30分
開演15分前より受付開始
◆場所: Rental Space 【KARIN】(京王井の頭線浜田山駅下車1分)
東京都杉並区浜田山3丁目31-2 2F
◆チケット価格:
前売券 2000円
当日券 2500円
◆ご予約はこちらから
https://www.quartet-online.net/ticket/pistons8