写真家・佐藤沙哉に憧れて

脳裏に残っちまった。instagramを見ていたら素敵なアカウントを見つけた。全部見た。写真の枚数が少ない。嘘だ。どこに隠してる? 何を秘めている? どこに住んでいる?  若干16歳の彼女について、何も知らないけれど、とにかく会ってみたくて話を聞いた。きっと何かヒントを教えてくれるだろう。

日々の生活、日々の発見。

──写真を始めたきっかけは?

もともとはお洋服や写真加工、軽いイラストを描くのが好きで。今思うとすごく軽率なんですけど、zineを作ろうと思って。そのとき仲良かった子にモデルをやってもらって私がスタイリングして写真を撮るその日に初めて家にあった一眼レフを使いました。それが本当に初めてカメラをしっかり触った日で。ただただ撮ることがすごく楽しくて、気づいたら「写ルンです」に手を伸ばし、そして全部フィルムになったという。

 

──最初はデジタルだったんですね。

デジタルは本当に最初のほうだけで、すぐフィルムに変わっちゃったんですけどね。

 

──最初は写真がやりたいではなく、zineが作りたいという思いが先にあったんですね。

そうなんです。

 

──zineというカルチャーとの出会いは?

zineは他の方が作ったものに心惹かれたというわけではなくて、私が好きなものをただただ何か形にしたいなという思いがあって、調べているうちにzineが一番最適かなって思って、中3の春休みぐらいに。

 

──そのときのzineってまだあったりする?

いや、それで撮影をして、そしたら写真の方にハマってしまって、自分がいかに浅はかな気持ちでzineを作ろうとしていたかみたいなのが分かっちゃって、絶対に作れないし、そんなものを売るわけにはいかないと思って。なのでzineは先延ばしにしてて、とりあえず写真を撮っています。

 

──完成はまださせていないんですね。

ぜんぜんもう。そのときに撮った写真もボツというか。

 

──普段はなにをしてらっしゃるんですか?

だいたい月1ぐらいで撮影をしていて。あとは普通に友達と遊んだり趣味に時間を費やしています。

 

──月1で撮るぞって決めて撮るんですか?

そうですね。いつも撮っている女の子と「今回はここがいい」って場所を決めて、その時々でコンセプトがあるかないかは別なんですけど、それで撮っている感じです。なので作品撮りというよりかは、遊びながら撮っている感じです。

 

──ちなみに趣味というのは何をやっているんですか?

音楽を聴くのが好きで、それから本を読むのが好きです。本は小説とか、漫画とか。最近読んだのは魚喃キリコさんの『キャンディーの色は赤。』っていうので、短編集で一編が8ページぐらいしかないのに読むのに20分くらいかかります。恋とかまだ私にはよくわからないけれど、私達が大切にしているもの全て、根源は一緒だなって改めて感じました。

 

──音楽は何を聴いてますか?

音楽は大森靖子さんがすごい好きで、それで大森靖子さんばかり聴いてます。あと銀杏BOYZ。

 

──直接zineに触れた体験はあったのですか?

初めては服飾系の専門学生の方のzineを買ったんですけど、自分で装丁をやってらして、紙を切るじゃないですか。ここのギザギザが、なんていうんでしょう?

 

──小口ですか? 本の紙が見える部分。

大きく刷って切ったのか分からないけど、自分でただ適当に切ったみたいな。それがなんかすごい「自由だなぁ、いいなぁ」と思って、これかもしれないなと感じて。自分の好きなものを発信するというか。そういうコミュニティを広げるみたいなことをtwitterでしていて、SNSだけで終わるのがすごく嫌になって、SNSだけじゃなくて他の媒体に落としたいなって思った時に一番簡単で手を伸ばせるなって思ったのがzineで。

 

──それまでの媒体はSNSだけだったのですね。

ただただ自分の部屋や好きな洋服を上げるとか。そんな感じで。

 

──服を作ったりはする?

ぜんぜんぜんぜん。コーディネートだけです。

 

──去年のTokyo art book fairは行きました?

すごい混んでて、そこにいって、写真やイラストだけじゃなくて面白いお店や看板を集めただけとか、見たことがないような種類のzineが売っているじゃないですか。それが面白くって。やっぱり私はちゃんとzineを作ろうと思って。

 

──今もzineは作っている?

まだ発表とかはしてないんですけど、instagramで出会った男の子と女の子がいて、その3人と共同で作っています。今ちょっとづつ進めているところです。

 

──もしかしてよくコメントしてるネギシコウダイくん?

そうですそうです。まだ会ったのは1回だけで、明日打ち合わせでまた会います。初めて彼の写真を見たときに、まず男の子で写真を撮っていること自体が少ないじゃないですか。学生時代って。

 

──確かに。写真部って女の子しかいなかった。

そうなんですよ。うちの学校には写真部もないし、男の子がカメラを持ち歩いて、学校生活を撮っているということが新鮮すぎて! 初めて彼の写真を見たときに「なんてかっこいいんだろう」って思いました。

 

──この写真を見たとき、この人本気で写真やってるんだって気づいて気になってます。

そうなんです! 会って話しても、私がzineを作りたい方向を話したら「俺も同じこと考えてる」って言ってて、周りでも普通の学校とかの友人でも、写真を撮っている人すらいないし、写真と向き合っている人すらいなかったのに、2人が真剣に写真について考えていて、なんかそんなの初めてで嬉しかった。

 

──もう一人はどういう方ですか?

大森瑠々さんっていって最近ポカリのCMの写真を撮っていました。2人が可愛すぎてもう「ハァー!」って実はなってるんですよ。

ネットワークの裏側へ

──ほかにアップしていない写真ってどれくらいあるの?

上げてないのいっぱいあります。1年で1800枚ぐらい撮ったのですが、instagramって小さくアップした順番に並べられるじゃないですか、なんか「えー」ってなっちゃうんですよ。変にちょっとインスタを洋服とか小物で極めてた時期があったので、並び方とかが変にジクザグ縦に人とか同じような色が並んでたりすると気になっちゃって。写真一枚一枚には関係ないって分かってるんですけど、やっぱり全体を見てすぐ載せても消しちゃったり。

 

──正方形なのも気にくわないですよね。

横向きの写真が小さくなるのも気にくわないし。パソコンで見ると横大きいじゃないですか、なのにinstagramに載せると画面の1/3ぐらいの小さいものになって、見にくいし迫力もないしで。

 

──サイトとかは作らないの?

作ろうと思ったんですけど、私の技術じゃまだ無理でした。(笑)

 

──大学はどこへ行こうとしてますか?

普通の4年制の大学で、まだ志望校は決まってないんですけど、美術大学とかは無いかなと思ってます。

 

──そうなんですね。何学科ですか?

社会学科かな。

 

──高校の時点で社会学に興味を持つってすごいですね。

もっと今の社会の動きと文化を絡めて考えたり、時代を捉えるというか、そういうのって社会学が一番できると思って、自分の作るものに活かせそうなものを学びたくて。どうしても、高校生なので学校とその周辺で精一杯で社会というよりかは「自分中心で見た生活」しか把握できないじゃないですか。だからもっと大学に行って学ぶぐらいだから、自分にとって視野が広がるものって考えた時に社会学かなって。

 

──学校にいることの閉塞感みたいなものは感じているんだ。

閉塞感ばかりですね(笑)

 

──その辺りはいつも時代も変わらなくていいですね。経済学とかは興味がなかったんだ?

高校受験をした時の塾の先生に、社会学とかいいんじゃないって勧められて。ずっとそれまで経営とか経済でいいかなみたいに軽く考えてたんです。特にやりたいこともなく4年制大学に行っても理工学だと忙しいし、そんなすごい理系なわけでもないし。文学部は英語苦手だしなって思った時に、消去法でそれくらいしか残らないって思っていたんですけど、よく知らなくて考えてもなかった社会学部とか文化構造学部が合いそうって仰ってくださって。それで調べたら、やるなら社会学だなって。

──気になる社会学の先生はまだいない感じ?

全然知らないです。

 

──社会学をやっている友人は「この大学に行きたい」というよりかは「この先生のゼミに入りたい」からで大学を選んでいたのを、ふと、思い出しました。

そっか。先生から入っていくのもありなのか。そしたら社会学だけじゃなくてもいいですよね。

 

──写真の話に戻すと、他に興味がある人っていたりしますか?

写真家の方とか、写真をやっている方って……なんだろう、優劣つけにくいっていうか……(思い出したように)花井理緒ちゃん。大阪の方で一回も会ったことないんですけど、悩みがすごい根本的に似ていて、DMで長文をやりとりしてて、初めて自分みたいな悩みを持った人がいる! って思いました。

 

──どういうことを話してますか?

話題ははたから見たら多分暗いんですよね。「写真の才能があるかないかなんで分からないんだろう」みたいな(笑) 最近話したのは「誠実と馬鹿正直の違いとは」みたいなことで。そういうストーリーを理緒ちゃんが載せていて。

 

──ストーリーから会話のきっかけになっていくんだ。

なんだろう、お互いになんか自分と周囲との折り合いみたいなところに、似たような気持ちがあって。

 

──佐藤さんにとって、良い写真とはなんですか?

ファインダー越しに眺められていた景色がこっちに追いついて寄り添ってくれたその一時を永遠にした写真は、当時撮影者が内だけで蠢かせ秘めらせていた思いの色が写真を通して伝わってくるんです。その写真を見た第三者がその写真によって何かが湧き、鮮やかになって。純度が高くてどこまでも澄みきった、そんな写真に触れたいし、そんな写真を撮りたいと渇望してしまう。

 

──一緒にzineを作っている2人とはどういう議論をしているんですか?

私がzineを作ろうと思って、1人の写真よりも何人かの写真を集めた方がそれぞれの写真の世界観が浮き彫りになりやすいじゃないですか。それが良いなと、最初だし他人と作った方がいろんな発見があるだろうなと思って。それでネギシさんに「興味ないですか?」ってDMを送って、そしたらネギシさんが恋人の瑠々ちゃんも一緒にどうですかって言ってくれたんです。それで3人でやることになりました。それまでは事務連絡しかしていなかったんですけど、会って……何を話したんだっけ。何を話したかはよく覚えてないけれど、私とは違って息をするように写真を撮る人達だなと強く感じたことは覚えています。私にはこんな風に写真自体を楽しめていないって思ったことも。私はずっと撮る側にいたので、撮られることって無いじゃないですか。

 

──うんうん。

普通に話し合ってる時とかに、ネギシさんが撮ったり。帰り道とかも何にも言わないで撮ったりしてて、「この人はなんでも残そうとしてるんだな」と思って。大森さんもそうなんです。

 

──撮ったり撮られたりの関係ができているんですね。

そういう自然が……なんていうんだろう、衣食住に写真が加わっていて、この2人は息をするように写真を撮りあっていて、それに感動しちゃって!

 

──楽しめている人って強いです。

そうなんですよ。私はもちろん楽しんでいるんですけど「写真が楽しい!」っていう純粋な気持ちだけで撮れていなくって。ネギシさんと瑠々ちゃんは写真を楽しくてすべての瞬間が忘れたくなくて、残したくて撮っているって純粋な気持ちで。私は違うや…と。身近に写真を撮る人がいるのって羨ましいです。

 

──そこまで話されるとネギシさんに会いたくなってきますね!

ぜひ! すごく喜ぶと思います! 初めて会ったとき、写真を見せ合ったんです。ネギシさんが瑠々ちゃんと私に写真を見せてくれている時に「これは何をしていて撮ったのか忘れてしまった」と言っていて。それを帰りながら考えていたのですが、写真って別に何をしていたかとか思い出せなくていいって、私たち見ている側は知らなくていいって。その濃密な時間があったということが大切だから。日常において撮った理由なんていらないよなってことに当たり前だけど改めて気づいた!

 

 

プロフィール

佐藤沙哉 Saya Sato

2001年生まれ。写真家。
https://www.instagram.com/amairona/

text: 石田貴之
pho: 立花桃子