kill remoteデザイナー・毒kinokopink

アイドルやミュージシャンの衣装を作っている毒kinokopinkさんが昨年10月に玄関をテーマとしたブランドkill remote(キル・リモート)を立ち上げました。今回、2018-19awのファッションショーを恵比寿で開催するということで、デザイナーの毒kinokopinkさんにインタビューしてきました。彼にとってファッションとは、そしてブランドを経営する意味とは何なのか。もしかしたら全部嘘なのかもしれないけれど、2018年はこんなことを考えていた毒kinokopinkをどうか忘れないで。

1 失敗から学ぶことが多い

──毒キノコピンクさん本日はお越し頂きありがとうございます。

はい。

 

──まずキノコさんはアイドル界隈の衣装を担当されているイメージがありますけれども、仕事のキャリアとしてはいつから形成されているんでしょう?

渋家元メンバーのちゃんもも◎さんってご存知ですか?

 

──もちろん。

ちゃんもも◎の服を作らせて頂いたのが最初のスタートなんじゃないかと思います。

 

──キノコさんは渋家に住んでいらっしゃったんですか?

2012年あたりから……あんまり覚えてないな。仕事やったタイミングとか、渋家に入ったタイミングとかあまり区切りになっていなくて、なんとなくルーティンの中でやることになった感じが多いから。渋家メンバーだった期間とはすぐ言えないんですよね。今でもやんわり渋家の人と関わってるし、渋家にたまにいるなって感じだから。あんまり自覚的に渋家を抜けたって印象もないんだよね。

 

──そうなんですか。

時期的にあれなんだよ、あの、僕って時期的なものを覚えることができない…のかな。親の誕生日とかも覚えられないし、家族の誕生日誰1人知らないのね。自分にしか興味がない……のかな。イヤな奴なのかもしれない。

 

──なるほど。服を作る以前って何をしてらっしゃったんですか?

服作る以前は、本を読んで勉強してたりとか、いろいろバイトをやってました。基本的に人と触れ合うようなバイトが多かったのかな。ずっと服を作り続けていたわけではない。

 

──秋葉原のカフェのキッチンで働いていたというのは風の噂で聞きました。

それは半日で辞めました。

 

──半日で!?

バイトとかは続かなかったんだけど、唯一続いたのがあんまり名前は出せないけど、アニメ系の会社のバイトはけっこう続いてて。

 

──もともとアイドルは好きだった?

もともとアイドルが好きで、やっぱりこう美しいものという意味で好きというか。どうしても、仕事をしているとアイドルのことが詳しくなったりとかするんだけど。ライブ自体もそんなに行くタイプではなかったので。

 

──服を作り始めたのが2013年くらいだとすると、4年ぐらい服飾の仕事をしていると。

ちゃんと仕事としてやってんのかと言われたら3年ぐらいかな。

 

──ではその3年の中で印象深かった仕事をひとつ挙げるとしたら?

これもね。難しい話で、僕が何かを達成したとか、大きな会社の◯◯の仕事とか残らなくて、そこらへんの成功した話は均等に嬉しいみたいな感じなの。

 

──これが仮にインタビューじゃなくて、ただの雑談だとしたら何か事例はありますか?

逆に、失敗した話のほうが残ってるの。悪い印象のほうが残るの僕。成功談的なものが自分の中に積み重なっていかないの。基本的に後ろ向きな性格だからね、たぶんね。たとえばさ、仕事で失敗してすごい借金を背負ったりとか。あとは、お金のことが若い時、曖昧になってるから曖昧なまま進めたら、どっちも不利益だったみたいな。向こうも清算の段階で言ってたことと違うじゃないですかって怒る。僕も言ってたニュアンスと違うことが伝わってしまっているからちょっとなあ、と思っていたりとか。反省することのほうが多い。

 

──なるほど。

失敗はしたくないけど、失敗から学ぶことの方が多い。

 

2 再定義と教育

 

──そもそもなぜ服を作ろうと思ったのかお伺いしてもよいですか?

原体験的なもの? 毎回、嘘のことを言っているんだけど、今回はわりと本当のことを言うと、モノを残したかったわけ。……ってだけなんだよね、正直ね。もともとプラモ作るのが好きで、ガンダムのプラモデルとか、フィギュアとかも好きで。今は全然だけど。それを扱っているうちに何かを組み立てて、何かを作るのが好き。実際に見に来てくれるってのが、リアルの関わり自体が薄いタイプだから、何かを作るとそれを見にくる人がいるから。見にくる人のために作ってるわけじゃないけどね。見にくる人と会いたいとか直接な意見というのが出てくるから。ソーシャルじゃなくてね。ネットワークの中でじゃなくて。ネットだとさ気軽にいけるわけ、どっちも反応も気軽なわけですよ。いいです、悪いです、かわいいです、みたいな。リアクションが欲しいっていうか、ある種の承認欲求なんだけど、僕自体は承認欲求が薄いから、他のものなんだろうなと思った時「服」なんだろうなと思ったり。それも理由のひとつなんだけど。

 

──承認欲求が薄いというのも含め、原動力となる「欲望」が見えにくいとキノコさんに対して思っています。どのような欲望でキル・リモートを始めようと思ったのですか?

え、kill remoteの話? kill remoteと服を作る欲望ってのは別なのよ。そこは別の原風景がある。

 

──少し理解が追いつきません。通常、本人の欲望だったり恐怖だったりと、作品というものは一直線で繋がっている傾向が多いので、少し説明をいただいてもよろしいですか?

僕が、毒キノコピンクだっていう理由は、名前の理由じゃなくてね、僕がじゃない存在でいたいから毒キノコピンクなの。

 

──本名で活動はしていませんよね。

本名でやらない理由はこっぱずかしいってのがまずひとつ。自分でない存在を立てた方が、恥ずかしい自分の内面を代弁してくれるってのもあるし、あと複数人立てられる気がしてて、自分じゃない自分マル1、マル2みたいに。それのマル2がkill remoteだったりする。

 

──なるほど。「毒キノコピンク」と「kill remote」は並列で同列なんですね。

んっとね、kill remoteをやっている毒キノコピンクみたいな。あのね、これ難しいのが「衣装を作っている人が毒キノコピンク」が普通なんだけど、これは「毒キノコピンクがやっているブランドはkill remote」みたいな感じなの。

 

──なるほど。kill remoteってブランドなので毒キノコピンクさん以外も参入できるわけじゃないですか。

そうだよ。でも、作ってる人は毒キノコピンクだよ。一緒。

 

──ブランドの作者が毒キノコピンク?

という意味じゃなくて、毒キノコピンクは概念上のもの、アノニマスみたいなものだから、ブランドのデザイナーが別の人になってもマルジェラデザインチームみたいな感じで毒キノコピンクが作っている状態というのは変わらない。「毒キノコピンクが作っているkill remote」なんだという状態は変わらない。

 

──毒キノコピンクという中身が入れ替わる可能性があるというわけですね。

もう全然ある。

 

──ようやく分かりました。もともとモノを作りたいというピュアな欲望があり、アイドルが好き、ファッションが好きというのが重なって服を作っているわけですが、その活動のメインストリームと、kill remoteを分けたのはなぜでしょうか?

クライアントワークで良いものを言われたものを自分のテイストとかを入れつつ作って欲しいって言われたら作る、デザインされきったものを仕様だけお任せしますって言われた状態で作る。これは仕事としてやります。それがたまに自由度の高い仕事だったりすると、僕の名前とかだったりがまれに表に出たりするじゃないですか。そういう場合での申し訳なさみたいなのがあるわけ。自分が表に出てしまう。でも仕事のためとか営業のためとか、いろいろなツテを探って言ったらここになりましたみたいなルートも欲しいわけ。ってなると名前を出したいときもあるわけですよ。あんまりやりすぎると良くないわけですよ、だから自分の権限ですべて持っていけるようなものが欲しかったの。ブランドじゃなくてもよかったんだけど、僕のパッと思いついたのがブランドだった。

 

──ざっくり言うと自分の砂場が欲しかったと?

っていうのも、そう。ひとつやりたいことがあったから、kill remoteの根本にあるのっていうのが「再定義」と「教育」だから。おこがましいんだけど、教育っていうのは自分の理念とかいうのを、慣例とかを教育は伝える手段だったのかもしれないけど、自分の中での意見を流布するっていう意味合いもあるのかなとか思ったりして、こういう風に感じていることっていうのはこう分かって欲しいし、こう考えて欲しいっていうひとつの、媒介であるブランドを立てた、みたいな。

 

──ふむふむ。

だからブランドを立てたっていう節はある。で「再定義」の部分ね。「再定義」の部分っていうのは、定義づけされたものをまた定義し直すのが再定義じゃないですか。何を再定義かっていったら、いろいろコンセプチュアルだったり、オルタナティブだったり、っていうブランドはけっこう多いじゃないですか。分かってると思うけど、周りのブランドでも個性派だったりとかを一本調子で続けるとかではなく……。

 

──一本筋を通すような態度ではなく……。

いや、というよりかは、あの、一旦そこに振り切らないで、でもなおかつ、一般の服じゃないっていうちょっと変わっている服じゃないけど、そんな言い方すると安っぽいんだけどね。良い服ってなんだろうなって改めて見つめ直したときに、こういう服なんじゃないかって自分を見つめ直すための再定義。良い服とはなんでしょうみたいな問いかけを自分に続けるような感じの。

 

──アニメ・キルラキルはどう感じますか?

キルラキルは好き。キルラキルはだから、服のことを記号で扱ったりとか。キルラキルは、割と記号論的な意味合いもあって、服は服であり、人は人でありっていうものの、それを脱コード化というか、人は服であり、服は人でありみたいな。……すべてであり、みたいなことを言うわけ! ロマンスが行き過ぎてるけど、僕的には男のアニメっていうのが、こう言い切って欲しいなという、僕は言い切れない性格だから、ああいうのは見てて楽しいよねって。

 

──なるほど。

グレンラガンもそうだったけど。言い切っているアニメだなって。

 

──服を作るときのコダワリというか、これを突破すると自分の中の合格ラインというものはなんですか?

人が着るからって話だね。僕はいろんな意味で言葉をね、変なぐらいにちょろまかしたりするわけで。だからロマンチストだよね! とか言われたりするけど、僕はリアリストだと思ってて。服は人が着るし、みたいな。様々な人が着るし、未来の人が着るかもしれないけど、今の人に向けて服を作ろうという気持ちだから、人が着る人のためには、運動する部分が必要だったりするわけじゃないですか。可動して、上の領域はここまでいくから、腕をちゃんと上げれるためにはそういう作りにしないといけないとか。

 

──今のファッション業界に一家言あったりしますか?

いや、ないね。「教育」と「再定義」じゃないけど、こう言う人たちもいるんだよって言う意味での、社会との付き合い、うまい付き合いみたいのをkill remoteでやりたいから。

 

──その辺りがドライなのは分かりました。では、なぜそこまでエネルギーと時間とお金をかけてまで「再定義」と「教育」をしたいのか? というところを聞きたいのですが。

なるほどね。それは一番簡単な質問なんだけど、なんかもう絵を描いてたりとかしたときに、たとえばあなただったら編集をしているときに「しんどい」とか思ったりしない?

 

──あります。

辛いとかダルいとか思ったりするじゃん。僕もそうで、服を作ってるときって服めっちゃ好きだし、作るのも好きだし、デザインするのも好きなんだけど、やっぱ、めっちゃ辛いけど心に火が付いてしまったらやるしかないって気持ちなわけよ。結局その、何がそこまで自分を駆り立てるのかって分からないけど、とりあえずやらなきゃいけないって使命感があるうちはいろいろやった方がいいなって。すぐ辞めることもできるし。だから毒キノコピンクは最終的に頭が無い状態にしたいっていうね。

 

──なるほど。もう少し理解を助けるヒントとして、自分と似ているアーティストや作家は誰だと思いますか?

誰なんだろう。パッと出てこないけどね。

 

──そうですか。

「好きなアーティストは?」とかだったらすぐ答えられるけどね。

 

──それでは別の質問。影響を受けているアーティストは?

デザイン的な意味でいったら、RAF SIMONS(ラフ・シモンズ)、RICK OWENS(リックオウエンス)、あとはアレキサンダー・マックイーン。それからフセイン・チャラヤン。ヴィクター&ロルフみたいな。 runurunuっていう人がいて、その人はいい意味でイカれてて、見た目も変わった人です。

 

──ファッション以外だったら?

けっこう浅いけどね。いろんな意味でも。それこそプラモとか。そこまで語れるかって言われたら怪しいもんで、アニメの世界観とかは……。どうなんだろう、なんなんだろうね。一番はプラモなのかな。ファッションのことじゃないことのほうが多いから逆にまとめずらいけど、全般的に流行ってることを追いかけてることが多いかな。

 

──トレンドを追うのが得意と。

ファッション以外のトレンド的な意味は好きで。

 

──とはいいつつもキノコさんは、トレンドもトラディショナルなものも扱えるようにはしているんじゃないかという気はしていて。

トラットは歴史とかだったりするじゃん。着こなしや着崩しってトレンドだったりするけど。トラディショナルは歴史を勉強すれば、自分の中で頑張ればいいけど、トレンドを掴むとか、現代の生き方を掴むって難しいじゃん。どういう社会情勢で、どういうことが起きたから、どういう風に影響を◯◯に及ぼしているのって掴みにくいし。何が流行っているから、こういう人が増えて、こういうファッションが流行っているというのもある。僕はこれといって趣味的には本を読むのは好きだけど、そこからファッションへどう移行しているのかっていうのは検討つかないけどね。分かり易いルートが、本を読んで、いろんな文献の中のサンプリングだったりするけど、自分の中で概念が出来上がって、それから連想していって、当てはめていく感じ。着地点は見えてるんだけど、ピースが当てはまってない状態からスタートしてる。

 

──影響を受けた哲学者はいますか?

哲学で影響を受けた人はいないな。

 

──たとえば「好きなアニメ監督は?」とかは?

いや、それもなんか……。割とザルなんだよね僕はそう言う意味では。これといって好きなものもはっきりしないし、みたいな。だから掴みにくいんだと思う。

 

──なるほど。全然分かりません。

3 うまくいけばいい

──今回のファッションショーのタイトルはなんですか?

「MODE MOOD CODE」ですね。

 

──この企画はいつ思いついたのですか?

企画自体はずっと前から。ファーストのシーズンやってることからやんなきゃいけないなと思ってて。

 

──今回のファッションショーにおいて達成すべきものはありますか?

無いです。本当に何も無い。ファッションショーにおいてとか何も考えてなくて、もう完全にkill remoteに関しては商業的な部分も考えているけど。歴史に残したいというか、文脈で語っていきたいみたいな感じなわけ。だから断続的にどこどこがどうで、達成目標が◯◯万円で、どうとかってのはあんまり立てない。それを考える人は別なんで。

 

──ああ、数字的なところじゅなくて、日々服を作っていると達成できることがあるじゃないですか。

例えば?

 

──例えば以前は襟の形がもんやりしていたけど、今回のシーズンでしっかりと見えてきた、突破できたなという部分。些末でお客さんに伝わらないこととかでもいいです。

良い感じにできたらいいぐらいにしか思ってないんだよね。

 

──そりゃそうっすね(笑)

中途半端な意味じゃなくて(笑) あの、細かなことじゃないなという、もちろん僕のね、じゃあ言うよ! 今回はステッチをね、ステッチをちゃんとデザインステッチとして表に出るような綺麗にはめていけたらいいな、とか。パンツのシルエットを改良して、履きごこちのいい感じにしたいなっていうのはある。これは僕、言ってもしょうがないなってのは思っちゃうわけ。瑣末すぎるというか、僕の中では意味のないことだと思ってて、それはテメェで解決しろよみたいな話じゃん。すごい重要なのはうまくいきゃあいいんだよみたいな感じなわけ。いい感じにいくってのがすごい重要だなと思ってます。

 

──なるほど。

僕自体がすごいさ、わりと中庸でフラフラしてるタイプだから、インタビューめちゃくちゃ掴みにくいんじゃないかなと思って不安になってきた。

 

──分かりにくいことの積み重ねだと思うんですよね。

ふふふ。これ? 僕のこと?

 

──つまり、インタビューはこれ1個じゃないと思うんです。一生の間、死ぬまでに何百というインタビューを受けるキノコさんもいるわけじゃないですか。

あんまないけどね、うん。

 

──だから毒キノコピンクさんのことを知らない人も読むかもしれないから、今回のファッションショーを一言で説明するとしたら、なんと言っていますか?

分かりやすくか……。

 

──分かりにくくても大丈夫です。

「更新」みたいな。

 

──同世代でライバルや尊敬している人はいますか?

コバケン(小林健太)、スズケン(スズキケンタ)、あとはノガミカツキ

 

──最後に、これからファッションを目指したい若い人たちにアドバイスを頂けますか。

名乗ったところからファッションデザイナーだから、変に考えずにやったほうがいい。

 

<プロフィール>

毒kinokopink
2013年よりアーティストへの衣装制作、オスカル祭。公園会等の企画のアートディレクションも手掛ける
2018年冬より人の運動に付随して動かされる服の「外」との関係を考えるファッションブランド[kill remote]を始動
twitter

 

<ファッションショー情報>

日時:
3/18 (日)
①18:00(開場) 18:20 – 18:40
②19:00(開場) 19:10 – 19:30

会場:恵比須 KATA
〒150-0011
東京都渋谷区東3-16-6 LIQUIDROOM 2F
恵比寿駅 徒歩4分

text: 吉田隆善
edit: yoichi takahira