Y…石田祐規 N…728
N とりあえず車1時間レンタルした
N 淡水(台北北部の観光地)までは30分くらいで行けるはず
Y おー
N まぁいいや、目的地は考えない
Y音楽だけかけつづける
N あれレコーダーは回してる?
Yここに置いておいた
N どんな音楽流そうかなぁ、1時間コースなので適当に。このプレイリストでぴったり位か
Y 何もうそんなプレイリスト作ってるの
N いやたまたま
N いやでもこれじゃないなぁ
Y いいよ音楽なんてなくても
N 進みましょう
N でも一度発注内容を見たい
Y はい
Y 発注内容をしっかり確認
N この雑誌のテーマを確認しよう
N 「Message」は言葉の通り「メッセージ」と言う意味合いと、「伝えたいこと」とも捉えることができます。数文字程度の英単語ですが受け止めかたによって様々な意味を持たせることができます。
それは万人に向けた主張でもあれば、隠しきれない想いを打ち明ける言葉だったり、タイムカプセルのようにまだ少し先の自分自身に残したいものだったり。
そもそも私がつくる”本”は、何か残す装置としては火をつければ燃えやすく、握り締めれば潰れやてしまうほど、脆いです。しかし場合によっては、わたしたちがおそらく生きるであろう数十年より先も存在することができる「可能性」を秘めた物質でもあります。
人と向き合うことや、明日より先を考えることも疲れてしまう世の中ですが、そこに対して「訴え」、誰かと分かち合いたい喜び、怒りと悲しみ、輝きを、小さなピースとして詰め込みたいと思います。
Y ちゃんと読んだなつや、真面目麻布の面が出てしまいましたね
N ということで出発します
Y 出発だ
N あれエンジンをオンにしてなかった、この機種運転したことない、いつもプリウスを借りるからでも機種によっては揺れたりするけどこの機種は慣れない。最近彼女と烏来(台北南部の温泉地)行ったときも変な機種借りて山道酔っちゃった。
Y ふむふむ
N でここを左のはずなんだよなぁ
Y さぁさぁさぁ。でその彼女と烏来に何をしに行ったの
N あれ曲が終わっちゃった
N ホタル。ホタルを見たいってことで
Y あーそれ目的だったんだホタルを見るって
N そう
Y それはそれはどっちから先にメッセージしたの
N メッセージ?いや普通に彼女がホタル見たいって言ってたから
Y 俺はホタルが見たいっていう欲求が発生したことがなくて
N でもさぁ今シーズンなのよ、4月の下旬から5月上旬がホタルの季節で、山の奥とかに行くと見れる
Y へー
N ホタルなんか見ないよね
Y 見ない見ない
N でも祐規とかあれじゃない?家の近くが川、河川敷じゃん。何か虫とかそういうの詳しそうなイメージ
Y いや全然いないねそういうの
N そうなの?
N 俺が住んでるところは例えばもう河川敷って言っても人工の川みたいな。江東区の景色、祐規はわかると思うけど町並みはクリーンな感じで、自分自身「自然」に対しては劣等感がある
Y でもおじいちゃんの家が静岡にあったから夏になったらそっちでカブトムシとかクワガタとかをたくさん集めてたな。
N おじいちゃんてあの雑誌令和で書いてた亡くなったおじいちゃん。
Y そうそうそうそう
N 静岡だったんだ、へぇークワガタ
Y いやカブトムシ両方。クワガタの方が好きだった。カブトムシはグッと掴む力が強くてあんま好きじゃなかった
N 俺が幼稚園小学校の時はムシキングとかの時代だから
Y ムシキングの時代?マジか
N カブトムシを採りに行くってよりかは100円払ってムシキングで遊んでるみたいな
Y ほえー
N どうしようどこ行こっか、高速乗ろうかなと思ってたんだけど
Y どこでもOKマート
N 左に行くと彼女の仕事場、とか。3年も台湾に入るとどこの通りがどこにつながっててみたいのが、だんだんわかるようになってきた。
Y いいな
N 台北市は分かるんだけど新北市になると全然わからん
Y まぁそりゃそうだ
N あの橋を越えると全然違う風景があって、とか。なんかキリがないよね。場所を知る、みたいな。例えばまた台北じゃない場所とかに行ったら、とか考えるけど。たとえばさー、俺の彼女が台中の大学に転学したいかもみたいな話をしてて。俺も適当に生返事で「じゃぁおれも台中行く」みたいに冗談言うけど、これ以上住む場所生活する場所を変える余裕があるのかな、みたいな
Y そうなのか
N 全然わかんなくて
Y 台中の大学に?
N みたいな話をしてたんだよね
N 転学したいかもしれないみたいな
Y あらあらなつやの彼女が台中に
N まぁでも人ってみんなどれぐらい付き合うかとかわからないじゃん
Y (笑)まぁそしたら寂しくなるなぁ
N それこそ最近ゆうきはYouTube一年やってさ、レスポンスとかどうなの
Y レスポンスなんて何もないよ
N そうするとなんか一方通行みたいなものになるじゃない。でも何かしらあるんじゃないの、手ごたえとか誰かが見てくれるとか
Y 手ごたえは自分の中にしかないからね
N 例えば一年前の動画と比べたりして?
Y 確実に動画を作る能力が上がっていくのとか楽しくてしょうがない。で動画の本数も今70本を超えてちょっと目標の100に近づいてきたぞ
N まぁ例えば雑誌で言えば、今何のモチベーションで誰に向けて何の雑誌を作るのかとかそういうのがかなり難しくなっている気がしている
N 昨日晴矢さん(※美術家・中島晴矢)はインスタライブで「何かまた次のプロレス作品を作るモチベーションができて俺はもう勝ち組だ」って言ってた。すげえ、みたいな。「なんか今テーマが見つけにくいこの時代で俺はちゃんとテーマ見つけたんだ」って言ってて。この人めっちゃ誇らしいなぁって
Y なんでそんなマッチョイズムなんだろうねあの人は。マッチョじゃない人に寄り添う気はないんだからあの人は(笑)
N まぁまぁ。でもさぁ、マジで。例えばYouTube始める人とかすごい多いけど、今誰に向けて何をするかとか、表現の前提的なものを考える時に、自分と自分のフォロワーの中でコミニケーションが取れてれば正直相互承認で完結することもできるし、一応は生きていくことができるじゃん。お金が稼げなくてもそこに豊かさはあるかもしれないし、時代はどんどんその方向にシフトしていってる。
Y うんうん
N 例えば雑誌を刷るとして、値段は多少高くても正直100冊刷って買ってくれる人や自分の届けたい人に余るように配れば満足することは可能ではあるのかもしれないし。令和は500部刷ったじゃん、でも流通乗せて5000部、6000部超えてくると自分の手に生えない範囲になってくるよね。ただ今みんな生活やらがきつい中で何をモチベーションにして雑誌を作ったり、あるいは創作していけばいいんだろうみたいなことを常に考えてたり。やっていく中でわかってくるのかもしれないけど。
Y これまでも何かこうメッセージを出すモチベーションってあったのかな、俺ら
N 祐規の原動力みたいなものは何?
Y 元からなくて、この状況の中でやっと発露してきたみたいなところはあるかもしれない。伝えることってなくない?みたいな。寧ろ全部伝わっていると思っているから。それで伝えるのもなんか白々しいっていうか
N まぁね
Y まぁ日本人だからなのかもしれないけど。アフリカ人なら毎日愛してるよってキスをするけど、日本人はそういうことしないじゃないですか。寧ろ伝える方がなんかちょっと妙な感じがする、みたいな感覚は大事にして次の雑誌を作りたいなと思っている
N まぁねその「空白」を読んでくれる人がどれだけ残るかっていう話で。それこそずっと生活してたらだんだんとその「空白」がわかるようになってくるかもしれない、みたいな。でもそうはいかないわけで。雑誌令和の読者が今一年経った中でどれだけ何を感じていたのかみたいなものが気になる時期だね。もちろんそれはグラデーション状で、その人たちとの距離によって感じ方が違うようなものを作ってしまったのかもしれないし、そうでないのかもしれないし
Y うん
N まぁでも来海さん(※編集者・来海万由)の言うように「何十年後も残るもの」について祐規としては、その大きな流れを見つつもやはり「パーソナリティー」みたいなものをすごく大事にしているんだよな、と思う。何十年後って人はみんな変わってしまうけれども、その中で何が残るんだろうみたいな。
Y あれ、ここ右だよね
N うん
Y ヨウジュアン~ (※右に曲がる、の中国語)
N その点で言えば、それこそ何かメッセージが残らないことが今の主流で。Snapchatから始まった、24時間で消えるインスタのストーリーがそうだし、LINEもちゃんとメッセージ消せるし。これと文脈軽視みたいなものが直接的に繋がっているとは言えないけど。昔こういうことを誰かをしていた言っていたみたいな文脈が基本、というよりかはその場その場の感情を発露してグルーヴを高めていくみたいなものが主流になりつつあるなかで。
Y まあ、メッセージなんてないよ
N 今ならビデオを編集してYouTubeにアップロードするけど、もう少ししたらライブ配信がベースになり、撮影や編集している時間がバグというかラグみたいな方向性になるのだろう、と。そうすると情報のラグみたいなもの必要性というか、不要なものとして処理されがちじゃない。それこそ「何十年も残って“しまう”もの」って寧ろそれが脆さだみたいな時代になっていくと思うし
Y うん、分かる。もうインスタのタイムラインの古さよ。言ってしまえばYouTubeも古いなって
N それこそ祐規にとって「写真」も古い物って感じなの?
Y むずいなぁ
N 左曲がるか車線入っちゃったし
Y 古い新しいとかじゃないかも。なんか単純に写真見せる相手がいなくなっちゃったなって
N ほぁ
Y 写真見てくれる人が本当になくなっちゃったなあここ一年で
N それって自分の写真? それとも写真界?
Y いや両方だね
N 以前はどういう手応えがあったの?
Y うーん。以前はもっと写真が好きで写真やってる人がめっちゃいたなーって思うんだけど。なんかみんなだんだん撮らなくなり、見せる相手もいなくなると、とか。でもちょっと俺もその辺あんまりよく考えられてないなぁ
Y でもなんか余計な小細工しなくて済むようになったのかも。最近サイト更新したんだけど、今までだったらZINEや本を買ってくれた人のためにWebには載せないでおこうみたいな写真とかを結構Webでも放出したりしてて。なんか出し惜しみしないのって結構大事だなって、なんとなくこれは俺の最近のトレンド
N 作品を作らない方向にシフトしてるってこと?
Y そうだね
N 何か残る作品を作るというよりかは、なんかその場で消えてしまう感情
Y あーそうかもね
N そっちにだんだんとシフトしていく
Y 完全にストックではなくこの20XX年どこで展示しました、出版しましたではなく「ふん!」「ふん!」リリースだぜ!みたいな
N あれこれどこ行くんだっけ
Y 北投行こうよ
N 右に行くと確か高速に入る
Y さっき面白い建築見えたから僕は満足ですね
N 圓山大飯店か。
Y 最近誰かに手紙とか書いたりした?
N 手紙を全く返せないのよね、というか「言えないこと」のほうが大きくなっちゃって、「言えてしまうこと」をそのままサーっと送り出せない
Y ふむふむ
N 紙面とか雑誌で「何を言わなかったか」を表現するのってめちゃくちゃ難しいような。何だろう。「何を言いませんでした」って表現するのも違うし。なんでそれを表現しなかったんだろうっていうことを説明するのにもやっぱそこにある空気とか色とか湿気を大事にしたくて。技法の問題かもしれないけど
Y 情報量多いもんね
N それが俺の最近の雑誌のちょっと立ち止まってるところで。俺が一番伝えたいのって「なんでそれを言えなかったのか」とかそういうつまってしまうことだし、でもそれを何十年後に向けて残そうとすると中々簡単ではない。声の大きなものが時代を代表して残されていくのだとしたら
Y そうね、その雑誌の薄っぺらさみたいなものむずいよね
N むずいよね
Y まあだからなつやはラップとかしてるんだと思うし
N だから「何を言えなかったです何に迷ってしまったんです」を切り捨てて規模だけ大きくしていいのかみたいな。読者との間、メッセージを受け取る人との間でその「隙間」の前提をどういう風に埋める作業をして行くかって考えたら、今の所は1000部2000部或いはそれを超えていく雑誌を本当は作りたいんだけど、まだ俺の中で手に負えなくてさ。雑誌作ってる人、来海さんもそういう悩みと常にぶつかったりしてるのかと思うんだけど
Y まあ400部500部とかでいいと思う
N 何で創作をするかみたいな、何でメッセージを他人に読ますのかと考えた時に、その詳細な部分まで、原動力を無視することはできない。自分は、何か作品を作りたいというよりかは具体的に自分の見える世界だけでも変えたい、的な欲求に沿っているわけだけど。ただ小規模だとそれには限界があるよね、と。段々と範囲が狭くなるばかりで、見える世界だけが見える世界というか。フォロワーだけが自分の世界みたいになっても成立するみたいに時代もなってるしね、どうしようというか。
Y ふむふむ
N だから祐規のYouTubeへの関わり方、何かを表現することへの関わり方を見てると、そこに俺と祐規との時間差もあるわけ、当然。祐規は10年やってきてある面で世界が狭くなったとしても、しかし濃密を追及し続ける、更に同じことを続けていくという決意があって。俺はまだ希望を持ってやっているし
Y いや希望持ってくださいよ。俺も希望を持っているよ。希望持ってないと新しいことなんてそんなしないし、雑誌作ったり動画を撮り始めたり、それってこう写真では手が届かなかったかゆい部分だったから超楽しいしそのまま、わかんない今コロナとかにみんなやられてるからさ
N だんだんと楽しくなってきてない?なんか楽しさが出てきてすごくみんな生きやすそうになってきて安心だなぁというか
N 今のコロナの流れはさ、インターネットの発展が時代の先を行っていて、コロナによって時代がインターネットに追いついたみたいな。言い方を変えればその管理化社会的なものの言い方はあるけど、それ一旦置いておけば別に時代がインターネットに追いついたみたいな話だし。時代とインターネットみたいなところでラグがあったから、そこに正しい悩みや葛藤があって、その曖昧な空間での表現が行われてきたわけだけど。それが軒並み揃ってくると、さっき言った通りに俺らはフォロワーを増やすしかなくなっていくのかなとか。
Y まぁその話はあるよね
N まあだからメッセージが送りたい相手にしか届かないというか。どうやって越境するかみたいなことを俺はずっと考えていて。
Y ふむふむ
N 雑誌令和を買った人が例えば引っ越しでもする時に、中古本としてBOOKOFFとかに売ったりしてくれたら、たまたま売り場で手に取った人が◯◯ちゃんだった、みたいな可能性にかけたいし。そういう偶然が生まれてほしいからこそ、適当なところにメッセージを放り投げることを重視していきたいという
Y もっと乱雑になりたいよね。雑誌コストが重い。雑誌刷るの大変だよ
N あ、ここ来たことあるとこだ
Y 北投は?
N 道間違えたっぽい、着かないかも
Y 結局なつやから最近メッセージを発した相手って誰?チャットでも通話でも
N んー。誰だろう。俺の中ではメッセージって関係が始まったり終わったりする時とか、そういう時にしか発生してなくて。今ならメッセージの送り方っていろいろあるじゃん。最初にそうさん(※ナハウス代表・菅谷聡)と知り合って、そのままインタビューの記事作ったのも、メッセージの一貫だなと思ってるし
Y アイラブユーだよね
N じゃあ今同じ状況で石田祐規にそれをできるかって言われたら、それは正直できないし
Y 俺はなつやを一年前にインタビューした音声データをまだ持ってるから。水タバコ屋さんで録ったやつ。いつでも記事にできるぜ!
N ははは
N メッセージの意義みたいなものね。それでも、それでもやっぱり乱雑に、生ぬるいものや薄っぺらさみたいなものではなく、もっと乱雑にメッセージを発信していかないと偶然が生まれないわけで。偶然が生まれないと自分の考えていることはフォロワーの中でしか通じなくなってしまうしていうことを分かっているから、やっぱりそれでも乱雑にメッセージを発したいって欲望がある
Y 越境して届かせたいメッセージみたいなものってある?
N なんか単純に生活が楽しいかどうかみたいな。人間って別に今ある道具で方法を変えて楽しくすることもできるけど、規模は大きい方がいい時もあるじゃん。そのために偶然性を高めておくみたいな。何かを届かせたいというよりかは、そっちを進めたい。まあでも偶然性を高めたところでその越境した人に対してちゃんとメッセージを発せるかと言われたらそれは別の話で
Y こっちに行くと何があるんだろう
N 越境ね我々は
N こっちに行くと何があるかとか全くわからない
Y ウェー
N とりままた右に曲がる
Y でも越境するほど世界は広くなかったっていうのがバレ始めてるよねていう感じはする
N うーん、まあ。前提を超えたコミュニケーションが大事だと思う。例えば前提の違いとは言い切れないけども、白人と黒人みたいな。金持ちと貧乏とか。俺は別にと言うか金持ちとちゃんとコミュニケーションがとれるようになりたい。だって今できないもん
Y むずいよね
N そこで放棄しちゃいがちだけど。でも目の前にいるのは人間だし、自分が人間だっていうことを認めてもらうためには相手を人間だとちゃんと認めないといけないし
Y うん
N 或いはあの人に何を話さなかった、みたいなことがどれだけの人に伝わるかみたいな。伝えなくてもいいんだけど、そのレスポンスがあった方が楽しいじゃん。例えばYouTubeでよくわかんない人からコメントが来たら嬉しいよね、とか。
Y うん
N 右に曲がります
N 右に曲がって、また右に曲がる
Y 右に3回曲がったら元の場所に戻ることができます
N まあね
Y ここ左に曲がろう
N 何に対して熱くなるか、だよね
Y 気温も暑いほうがいい
N ゆうきさんを最近誰にメッセージ送った?
Y いや送ってんのかな、送ってないのかもしれない
N なんか所謂ちょっと長めのと言うか、気持ちがこもってるやつ
Y そういうのはしてない。寧ろ俺は短いのを毎日やるのが大事かなってということで、あいつが孤独感を感じないように、とか興味を持っていることが伝わるように、とか
Y 山が見えてきたな
N 山の上にどんな店があるのか
Y 草御殿(花崎草さんが台北で運営していたスペース)
N でもどこで折り返そうか
Y 考えることはないんです。そういう時代じゃないし。例えば恋人も2人や3人が普通の時代がやってくる
N そう
Y 来ますよこれから。誰とも付き合わないけど、みんなと付き合ってるみたいなそういう世界が
N そうなんでしょうか~!
Y 2020年に生まれた子供はそれが主流ですよ
N ね。愛してるとか言わなくていいしね。あ、中国語だと愛してるってめちゃめちゃ言うんだよね
Y めっちゃ面白い
N 日本語だと愛してるなんてベタすぎて言えないじゃん。中国語だと言えちゃうんだよ。寧ろめちゃめちゃ言うんだよ
Y 具体的にはなんて言うの
N ウォ・アイ・ニーそのまま
Y 日本人が唯一知ってる中国語第1位じゃん。マジか。あれって冗談みたいな言葉だから実際にネイティブは使わないと思ってた
N 1日100回ぐらい言ってる
Y ってことは実際は1日7、8回は言ってるって事なんだろうな
N ひゃ
N で今の彼女が次の学期から淡水の方に引っ越すんだよね、5年生は学校に戻るみたいな。今は実習だから市内の方にいるけど
Y そしたらなつやともちょっと距離があるわけか。会えない時に愛を育むみたいな。それは寂しいが、会う回数が少なくなれば少なくなるほど想う時間が増えるわけですからね
N どうでしょうね
Y 離れたらもっと好きになる
N 会わなければ会わないほどいいところしか見えなくなる。例えば斉藤拓海とは2週間に一回ぐらい電話するんだけど。週間に一回ぐらいで電話をすると内省的なものだけが抽出されてすごく楽しい会話になる、と思うけど。普段の「いやーな」ところはだんだん見えなくなるしなあ
Y いいな俺も斉藤拓海と電話してみよう
N 十年に一回くらいしか話さないっていう人に対してはさらにもっと濃密な会話ができるのか、いや、それとも薄っぺらい会話しかできないのか。たちまち見えなくなるだけなのか。ってか十年後に雑誌令和の10周年記念イベントをやるとして皆が何を話すのかとか知りたいよね
Y まあそうですね。なつや30歳か
N そうおれがやっとと30歳になる
Y 10年はマジでなげーからな
N この後何十人と付き合うとかわかんないし
Y 一年間二人ベースで付き合うとして、はは
N 暑いからクーラーつけてもいい?
Y いいよ
N メッセージか。でもなんで今の今の時代に「メッセージ」っていうテーマにしたんだろう
Y そう、そこなんだよね。なんで「メッセージ」をテーマにしたんだって
N まあはもちろん来海さんが書けない何かがあるんじゃない、メッセージ的な。書けないっていうのは、それこそ言えないことなのかなとか勝手に推測しちゃうけど。それとも言っちゃうのかな。来海さんにも言えないことがあったりするでしょう、と。それとこのメッセージっていうテーマに関連性があるのかないのか。俺らの雑誌では、誰にも言えなかった事に対して中島晴矢さんが「公による私の侵犯」って書いてたけど。公と私みたいな感覚、難しい。
Y ないよね
N 昨日中島さんのインスタライブで「ここでセックスしてんだよ」って公にしてたけど、私が公の電波に流されてるのはすげー面白い
Y それは面白いね。それはTwitterにつぶやこう。「公の侵犯っすね」って
N 雑誌令和で「書けないこと教えて欲しい」って祐規の欲求を薄っぺらさじゃないところで教えてっていうテーマで設定したのは簡単なことじゃなかったなぁみたいな
Y 俺はそういう話が聴きたいんだよ、晴矢の部屋で週に5回セックスしてるとかそういうのが聞けて、やりたかったことが一年経つと何か中島さんの体にメッセージが伝わったんだなって。メッセージが伝わるのに一年かかったんだってていう嬉しさ、嬉しさ。これはもう希望ですよ
N 希望なんですよね、だからなんかもう来海さんのことがもっと知りたい
Y これは侵犯か?
N 次の交差点、左に曲がるらしい
Y そうだよね本当にメッセージが聞きたかったらメッセージっていうテーマにしないもん。本当はそこじゃない部分に何かがある
N 来海さんのメッセージを知りたいから、この案件も受けてみる。
Y 確かに文章をお願いしてみるか
N だからこの原稿を持って投げかけているということ
Y あとがき〜
Y というわけでなつや次の雑誌、どうしますか?
N わかんない。前書き書いただけどわかんない
Y 手探りだよね
N まあでもその場その場というか。インスタのストーリーって言ってもアーカイブ機能ってあるじゃん。そのアーカイブ機能みたいなイメージはあるっすね
Y あーなるほどなるほど。めちゃくちゃいいねそれ
N アーカイブみたいなテーマ、2020年まだアーカイブ機能が消えてないこと。ストーリー的なものアーカイブしていくみたいな感覚。メッセージをアーカイブしていく
Y タイムカプセル。前回やったから同じこと2回やるのもやりたくないけど、分かるよその気持ち
N 俺が去年(2019)の12月に作った「MO NOGATARI zine」って覚えてる?手元に一冊もないやつ。あれにも一応ストーリーみたいな写真を10枚ぐらいポンポンと乗せたりしたんだよね、楽しかった。いろんな手法がある
Y 首里城も今は跡地が見えるところまで解放されたから、また写真撮りにいこう
N てかあの雑誌をリニューアルさせたい
Y それでいいと思う。作んなきゃ見えないことの方が多いこともわかりましたし
N メッセージも書き始めないとわかんないからね
Y 普段伝えようとしないしな。最近はそういう「伝わる」満足度が生まれてきてしまっている
N さっきも言ったけど祐規はこの10年の積み重ねじゃん。この10年で積み重ねてきたから、言わなくても伝わる人たちには伝えられる可能性が比較的高いわけじゃん
Y 確認作業ではなく寧ろ受け取る側になりたい。受け取る側だったら寧ろ大歓迎。寧ろもっとみんな雑誌作ったり、手紙書いたりしてほしい
N 確かにね
Y まぁでも結局でもメッセージって返信しないとそのうち来なくなっちゃう
N 返信しよう返信
Y 返信していくことが大事、これすごくピンと来たな
N リプライをしていく
Y コメントをしていく
Y メッセージもらってないけど勝手に返信だして行くみたい行為ガンガンとしていこう
N 何でそこ、いつも一方通行なの(笑)
Y なんでなんだろうね、いや希望を持ったってしょうがないなーって。希望を持ってこのゲームに乗ってくれる人全然いないな、みたいな。あいつしかいない!みたいなのはあるけど
N 絶望か
Y もういい、一人遊びでしかないみたいなマインドだね
N 祐規はメッセージっていうよりかホタルなんだよね
Y ホタル
N 自分で光ってるんだよ、適切な時期になったら人が見に来てくれる
Y ブーン・ブーンって
N この原稿のタイトル、「俺はホタル」
Y 「俺はホタル」
Y そうかそうだよねホタルの光はメッセージかもだけど、人間が勝手に見てるだけだから
N そう
Y 越境してるのだ、ただメスに見つかればいいくらいで光ってるのに、人間が見てるって意味わかんないよね
N まあだから祐規はホタルなんだよ
Y ブーン・ブーンって
N 来海さんはどんなほたるなんだろう
Y 分からない来海さんは謎が謎を呼ぶなぞなぞミステリーがあるから何考えているかは実際わからない
N 「裸」になるのはむずい。「裸」になったら別に誰が金持ちとか関係ないし誰がシティボーイガールとかそういうの関係ないし、それこそ色を抜いていくかのように公を一旦脱いで、私の状態で会話をするでも。何十年も経ってしまうとそれは時代っていう、時代っていう服を着てたんだなって気づくのかもしれないけど。いつしか古臭くなってしまうからこそ、目の前で発光して光り、目の前で消えるのがいいのかもしれないね
Y ひょ
N と今2020年にこう思っているわけだけど
Y 2030年にみんなが裸の社会が完成しているでしょう
N どっちだろうね、寧ろこれがマイノリティになると思ってるけど
Y マイノリティ
N 寧ろみんながいろんな服を着て
Y そっちの方が自由だよねみたいな
N 着替えるのが楽というか、色んなフェイスを持てば face to face の意味がなくなっていく。いろんなフェイスを持ってるから別に face to face というか body to body の時代すら終わったぜって。コロナでも加速していると思うけど
Y レディプレイヤー1の時代、みんながゲームの中に入って生活している
N だからコロナでオンライン飲み会でもしてればいいようなふうになったのかもしれないし。body to body の必要は本当になくなったのかもしれないし、別に face to face でもさ、インスタで色んなフィルターとかかければいいし。じゃあ何をtoして人と繋がるかっていう意味で、もしかしたら来海さんはメッセージというのが大事、つまりボディであってもフェイスであってもどういう形態であろうと、メッセージがあるから何to何が生まれるんだみたいなことなのかもしれないし。まあ伝えたいことなくなったら別に死ねばみたいな
Y 極端やのう(笑)伝えたい事はインスタのストーリーで伝えて俺は満足しちゃってるからな、あれを見てくれてる200人は相当伝わってると俺は思っているから
N でもさ伝わった結果どういう何が起こったみたいなものがないとさ、伝えるバイブスとかって続かなくない?一周しないとさ
Y ママママ
N オスのホタルもメスが反応するからずっと光ってる続けられるわけで
Y こうやって俺もは今なつやと一緒に過ごせている日々が結構ホタルだったりするわけだ。自分が発信してきたこととか。それってなんかこうラグあるよね、メッセージ出して自分に返ってくるまでは数年かかるし
N そうそうそう
Y 俺は次、北極に行けるかもしれない
N ていう意味で祐規はもしかしたらマジで最先端(最北端)
Y とりあえず今は、「みんな水を飲んでくれ」ってメッセージを発している。その意味がわかるタイミングが50年後くらいに来ると思う
N なるほど
Y いつまでも飲める水が水道から出てくると思うなよ、と思う給水大臣です。
N 『雑誌令和』にも書いてたよね
Y 人が死んでくのはインフラから。世界大恐慌は間違いなく来るのかも。ただ俺の中で切実なメッセージだから本気でやりたくないみたいな気持ちもある。とりあえず自分が大切な人を守れる準備だけしときなって事しか伝えられない
N ふむふむ。
Y 本当はもっと楽しい、ハッピーなメッセージをたくさん出してきたいんだけど
N 守りの姿勢だよね、ゆうきはね
Y 攻めの姿勢はなつやがやってくれるから、なんかこれがみたいなのがあれば、俺は粘土みたいにくっつけていく仕事。メッセージみたいな粘土が、粘土や粘土が、みんな集まってもっとくっつけて、粘土!粘土!粘土!ってしたら大きな雪玉ができるからそしたらまあ、もう転がすだけなんだよね
N メッセージって別に孤独なものではない
Y メッセージを複数人でくっつけてもいい、こう考えたらちょっとポジティブかもしれない。みんなでメッセージを作ったりしてみようって、そういう雑誌のコーナーでも作ろうか
N 一緒に公園の砂場で山を作ったあの記憶を、感覚を。まあもちろん分かりあってない人たちですることにも嫌気がさしてしまう瞬間があるのかもしれないけど。時にはなんか単純に誰かと砂山を作っていく楽しいみたいな感覚、そしてそれを楽しいって発することが大事。そういう楽しいメッセージを蓄積していかないと
Y 天気の子みたいなやつやろ
N 大事な人も守れない、大事じゃないものを守らないと、いつしか大事なものが守れないのかもしれない
Y うん
N 左に曲がろう
この作品は雑誌『すめる』編集部が「Message」をテーマに対談を依頼し、石田祐規・増田捺冶の両名が「台湾で車を借りて、車内で1時間話す」という解釈をもとに制作した記事です。2020年1月に収録。
企画:来海万由
イラスト:増田捺冶
編集:Bugmagazine編集部
石田祐規・yukiishida.com
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